仮の義務付け・仮の差止めとは?わかりやすく解説|行政書士試験

仮の義務付け・仮の差止めとは?わかりやすく解説|行政書士試験

行政書士試験の行政法、とくに抗告訴訟分野の記述式では、
「本案判決まで待っていたら手遅れになるケース」をどう救済するか、という視点が頻繁に問われます。

その中心となる制度が、

  • 仮の義務付け
  • 仮の差止め

です。

この記事では、定義・要件・具体例を整理しつつ、
記述答案でどう使うかまで踏み込んで解説します。


目次

仮の救済制度の全体像を押さえよう

まず、仮の義務付け・仮の差止めの位置づけを整理します。

本案訴訟仮の救済
取消訴訟執行停止
義務付け訴訟仮の義務付け
差止め訴訟仮の差止め

取消訴訟における避難的措置が執行停止であるのと同様に、
義務付け訴訟・差止め訴訟にも、判決前の暫定的な救済制度が用意されています。


仮の義務付けとは?【定義と根拠条文】

仮の義務付けの定義

仮の義務付けとは、

義務付けの訴えが提起された場合において、
本案判決が出るまでの間、
暫定的に行政庁に対し処分または裁決をすべき旨を命ずる制度

をいいます。

📌 ポイント
👉 本案(義務付け訴訟)の結論を先取りする「仮処分的」制度


根拠条文(行政事件訴訟法)

行政事件訴訟法37条の5 第1項

義務付けの訴えが提起された場合において、
当該義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより
生ずる償うことができない損害を避けるため緊急の必要があり、
かつ、本案について理由があるとみえるときは、
裁判所は、仮に当該処分又は裁決をすべき旨を命ずることができる。

e-Gov法令検索行政事件訴訟法:リンク


仮の義務付けの具体例

例えば、次のようなケースです。

A所有の建物が違法建築で、倒壊の危険が切迫している。
隣地住民Bは、行政庁に対して除去命令を出すべきだとして
義務付けの訴えを提起した。

しかし、判決を待っている間に建物が倒壊すれば、
Bに回復不能な損害が生じてしまう。

このような場合、
本案判決を待たずに除去命令を出させる必要があるため、
Bは仮の義務付けを申し立てることができます。


仮の義務付けの要件【試験頻出】

① 手続要件

  • 義務付けの訴えが提起されていること

② 積極要件(効力発生のための要件)

次の2つを どちらも満たす必要 があります。

  1. 償うことができない損害を避けるため緊急の必要があること
  2. 本案に理由があるとみえること

③ 消極要件(効力を妨げる要件)

  • 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあること

📌 ここが重要
👉 積極要件を満たしていても、
👉 公共の福祉に重大な影響があれば認められない


積極要件と消極要件の整理【記述対策】

  • 積極要件
     → 仮の義務付けを「発動させる」ための要件
  • 消極要件
     → 仮の義務付けを「ブロックする」ための要件

答案では、
「もっとも、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある場合には認められない」
という逆説構文が非常に使いやすいです。


仮の差止めとは?【定義と根拠条文】

仮の差止めの定義

仮の差止めとは、

差止めの訴えが提起された場合において、
本案判決が出るまでの間、
暫定的に行政庁に対し処分または裁決をしてはならない旨を命ずる制度

をいいます。

👉 将来の処分を一時的にストップさせる制度です。


根拠条文(行政事件訴訟法)

行政事件訴訟法37条の5 第2項

差止めの訴えが提起された場合についても、
前項の規定を準用する。

つまり、
👉 要件構造は仮の義務付けと同じ
という点が試験では非常に重要です。


仮の差止めの具体例

例えば、次のような事例です。

A土木会社が宅地造成工事を行っている。
隣地住民Bの土地では、
工事の影響で地盤沈下が進行している。

Bは工事差止めの訴えを提起したが、
判決を待つ間にも被害は拡大する。

この場合、
工事を一時的に止めなければ回復不能な損害が生じるため、
Bは仮の差止めを申し立てることができます。


仮の差止めの要件【仮の義務付けと同一】

① 手続要件

  • 差止めの訴えが提起されていること

② 積極要件

  1. 償うことができない損害を避けるため緊急の必要があること
  2. 本案に理由があるとみえること

③ 消極要件

  • 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあること

📌 仮の義務付けと同様、
👉 消極要件に該当すると効力は発生しません。


試験で差がつくプラスαポイント

よく狙われる比較

  • 仮の義務付け・仮の差止め
     vs
  • 執行停止

👉 共通点:本案前の暫定的救済
👉 相違点:対象となる本案訴訟の種類


記述式で使える定型フレーズ

本案判決を待つことにより回復困難な損害が生ずるおそれがあり、
かつ本案に理由があるとみえるため、
仮の義務付け(仮の差止め)が認められる余地がある。

この一文を使えるかどうかで、
答案の完成度が大きく変わります。


まとめ|仮の救済は「緊急性×本案の見込み」

  • 仮の義務付け:処分をさせるための暫定措置
  • 仮の差止め:処分を止めるための暫定措置
  • 要件構造はほぼ同じ
  • キーワードは
     👉「償うことができない損害」
     👉「緊急の必要」
     👉「本案に理由があるとみえる」

行政書士試験では、
本案訴訟との関係性を意識して書けるかが合否を分けます。

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この記事の監修者

大山 悠太(おおやま ゆうた) 大山 悠太(おおやま ゆうた) 大山ゼミナール代表講師

【経歴】
2014年12月:宅地建物取引士大学在学中合格(独学3ヶ月)
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
2018年1月:行政書士試験合格(独学6ヶ月1日1時間1発合格)
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
2022年6月:行政書士事務所を経営しながら、司法試験予備試験短答式試験合格
2022年11月:司法試験予備試験論文式試験民法上位4.6%
2022年12月:行政書士試験オンラインスクール開校(大山ゼミナール)
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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