取消訴訟の訴えの利益(狭義)とは?徹底解説|行政書士試験

取消訴訟の訴えの利益(狭義)とは?徹底解説|行政書士試験

行政書士試験の行政法では、
取消訴訟の訴訟要件が毎年のように問われます。

その中でも、受験生が混乱しやすく、
かつ記述式で差がつきやすいのが
➡「訴えの利益(狭義)」です。

この記事では、

  • 狭義の訴えの利益の意味
  • 肯定・否定が分かれる理由
  • 頻出判例の考え方

を、試験に直結する形で整理します。



目次

狭義の訴えの利益とは?

訴えの利益の基本的な考え方

狭義の訴えの利益とは、

取消訴訟を提起し、
処分を取り消すことによって、原告の権利・地位が現実に回復する実益があるか

という点を判断する要件です。

言い換えると、

  • その裁判を続ける意味はあるのか?
  • 取消判決によって何か得られるのか?

という実益の有無を問うものです。


訴えの利益が否定される場面

たとえ、

  • 処分性があり
  • 原告適格も認められる

場合であっても、

👉 取消しても何も変わらない
👉 回復される利益が存在しない

のであれば、
その訴えは不適法として却下されます。


広義の訴えの利益との違い(注意)

  • 広義の訴えの利益
    → 「法律上の利益を有するか」=原告適格
  • 狭義の訴えの利益
    → 「取消す実益があるか」

試験では、この区別が前提知識として扱われます。


訴えの利益を肯定した判例【頻出】

運転免許取消処分(最判昭40.8.2)

運転免許取消処分に対する取消訴訟の係属中に、
免許の有効期間が経過した事案です。

一見すると、
「もう期限が切れているのだから意味がない」
と思われがちですが、最高裁は訴えの利益を肯定しました。

理由

取消処分が取り消されれば、

  • 有効期間中に更新できた地位が回復し
  • 免許を継続できる可能性がある

👉 取消しによる実益が残っているためです。


公務員の懲戒免職処分(最判昭40.4.28)

懲戒免職を受けた公務員が取消訴訟を提起し、
係属中に議員に立候補した事案。

議員立候補により失職しても、

  • 懲戒免職が取り消されれば
  • 公務員時代の給与や退職金請求の可能性が残る

として、訴えの利益は失われないとされました。


土地改良事業の施行認可処分(最判平4.1.24)

事業工事が完了し、
社会通念上、原状回復が困難な場合でも、

  • 認可処分を取り消せば
  • 換地処分など他の法的効果に影響する

ため、訴えの利益は消滅しないと判断されました。


公文書非公開決定(最判平14.2.28)

非公開とされた公文書が、
後に裁判で証拠として提出された事案。

証拠提出されても、

  • 一般閲覧はできない
  • 写しの交付も受けられない

ため、非公開決定を取り消す実益があるとして、
訴えの利益を肯定しました。


優良運転者記載のない免許更新(最判平21.2.27)

客観的に優良運転者の要件を満たすにもかかわらず、
一般運転者として更新処分を受けた場合、

  • 優良運転者として扱われる法的地位の回復
  • 将来の更新手続への影響

という実益があるため、
取消訴訟の訴えの利益は肯定されました。


訴えの利益を否定した判例【頻出】

皇居外苑使用不許可処分(最判昭28.12.23)

使用予定日が経過した後に取消訴訟を行っても、

  • その日に使用できる可能性はない

ため、訴えの利益は消滅するとされました。


生活保護変更決定(最判昭42.5.24・朝日訴訟)

被保護者が死亡すると、

  • 生活保護受給権は一身専属
  • 相続されない

ため、取消しによる実益はなく、
訴えの利益は否定されます。


土地収用の明渡裁決(最判昭48.3.6)

明渡しが完了した後に、

  • 明渡裁決を取り消しても
  • すでに義務は履行済み

であるため、
取消す意味がなく訴えの利益は消滅します。


運転免許停止処分(最判昭55.11.25)

停止期間経過後、無事故無違反で一定期間が過ぎると、

  • 停止処分の不利益は完全に解消
  • 将来への法的影響もない

ため、取消訴訟の訴えの利益は否定されました。


建築確認(最判昭59.10.26)

建築工事が完了した後では、

  • 建築確認を取り消しても
  • 建物の除去等の効果は生じない

ため、訴えの利益は失われるとされました。


保育所廃止条例(最判平21.11.26)

保育実施期間が満了した後は、

  • もはや保育を受ける可能性がない

ため、取消しても原告の利益は回復せず、
訴えの利益は消滅します。


衆議院議員選挙(最判平17.9.27)

衆議院解散により、

  • 選挙の効力は将来に向かって消滅

するため、
選挙無効訴訟の訴えの利益は否定されました。


試験対策まとめ【記述の書き方】

記述式では、次の型を意識しましょう。

  1. 狭義の訴えの利益=訴訟要件であり、その取消す実益の有無
  2. 取消判決による権利・地位回復の可能性
  3. 将来の法的効果への影響
  4. 判例の趣旨を一言で当てはめる

ひとことで総整理

  • 取消して意味があるか? → 肯定
  • 取消しても何も変わらないか? → 否定

これが、狭義の訴えの利益の核心です。

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この記事の監修者

大山 悠太(おおやま ゆうた) 大山 悠太(おおやま ゆうた) 大山ゼミナール代表講師

【経歴】
2014年12月:宅地建物取引士大学在学中合格(独学3ヶ月)
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
2018年1月:行政書士試験合格(独学6ヶ月1日1時間1発合格)
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
2022年6月:行政書士事務所を経営しながら、司法試験予備試験短答式試験合格
2022年11月:司法試験予備試験論文式試験民法上位4.6%
2022年12月:行政書士試験オンラインスクール開校(大山ゼミナール)
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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