執行停止(取消訴訟)とは?徹底解説|行政書士試験

執行停止(取消訴訟)とは?徹底解説|行政書士試験
行政書士試験の行政法、とくに記述式で安定して得点できる論点が
「取消訴訟における執行停止」です。
取消訴訟は、判決が出るまでに数か月〜1年以上かかることもあります。
その間に処分が実行されてしまえば、
たとえ勝訴しても意味がなくなるケースが少なくありません。
そこで重要になるのが、
執行停止という“仮の救済制度”です。
執行停止とは?
裁判所が決定により、
将来の回復困難な不利益を防ぐための暫定措置として行います。
根拠条文(最重要)
行政事件訴訟法25条1項
(執行停止)
第二十五条 処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2 処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。
3 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
4 執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない。
5 第二項の決定は、疎明に基づいてする。
6 第二項の決定は、口頭弁論を経ないですることができる。ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。
7 第二項の申立てに対する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
8 第二項の決定に対する即時抗告は、その決定の執行を停止する効力を有しない。
執行不停止の原則
取消訴訟を提起しても、
原則として処分の効力等は止まりません。
これを
➡ 執行不停止の原則
といいます。
これは必ず覚えてください。
執行不停止の原則の根拠条文
行政事件訴訟法25条1項
上記の通り、同原則は25条1項に定められております。
「処分の取消しの訴えの提起は、当該処分又は裁決の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。」
条文の意味(試験・実務向け整理)
この条文が定めているのが、いわゆる執行不停止の原則です。
- 取消訴訟を提起しても
➡処分の効力はそのまま有効 - 行政庁は
- ➡ 処分の執行を継続できる
- 手続も
➡ 止まらずに進行する
具体例で理解しよう
A社が県知事から開発許可を受け、造成工事を開始しました。
近隣住民が安全面を理由に、
開発許可処分の取消訴訟を提起したとします。
しかし、執行不停止の原則により、
➡ 訴訟を起こしても工事は継続
➡ 工事が完成すれば原状回復は困難
結果として、
取消訴訟の訴えの利益が失われるおそれがあります。(訴えの利益は訴訟要件です。詳しくはこちらで解説しております。)
このような事態を防ぐために存在するのが、執行停止です。
執行停止の要件(2つ)
① 処分の取消しの訴えが提起されていること
→ 取消訴訟を起こしていないと執行停止は不可
② 重大な損害を避けるための緊急の必要があること
→ 判決まで待つと回復困難な不利益が生じる場合
ポイント整理
- 「重大」+「緊急」
- 単なる不便・経済的不利益だけでは足りない
- 人命・生活基盤・環境破壊などは典型例
執行停止の方法と限界
裁判所の判断内容
裁判所は、申立てにより、
次のいずれかを全部または一部停止できます。
- 処分の効力
- 処分の執行
- 手続の続行
効力停止は最後の手段
行政事件訴訟法25条2項では、
処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、
処分の効力の停止をすることができない
と定められています。
執行停止が認められない場合
要件を満たしていても、
次の場合には執行停止はできません。
① 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき
例:
- 災害対策
- 公共インフラ整備
- 公衆衛生に関わる処分
② 本案について理由がないとみえるとき
→ 原告が明らかに負けると判断される場合
即時抗告
根拠条文
行政事件訴訟法25条7項
執行停止の決定、または申立て却下に対して、
不服がある者は即時抗告をすることができます。
事情変更による執行停止の取消し
行政事件訴訟法25条6項
執行停止決定後に、
- 損害の危険が消滅
- 社会状況が変化
- 事情が大きく変わった
場合には、
裁判所は行政庁の申立てにより、
執行停止決定を取り消すことができます。
内閣総理大臣の異議(超重要・頻出)
根拠条文
行政事件訴訟法27条
内閣総理大臣は、
やむを得ない理由がある場合には、
理由を付して
「執行停止をするべきでない」
と裁判所に異議を述べることができます。
このあたりは択一でも頻出です。必ず条文ごと理解しておきましょう。
異議の効果(試験で必ず問われる)
- 裁判所は異議に従う義務あり
- 裁判所の裁量は否定される
| タイミング | 効果 |
|---|---|
| 決定前 | 執行停止できない |
| 決定後 | 執行停止を取消す |
➡三権分立の例外的制度として要注意です。
このように憲法と行政法は連続性があります。学習効率の高めるために関連性を意識しながら学習しましょう。
行政不服審査法との比較(プラスアルファ)
| 項目 | 行政不服審査法 | 行政事件訴訟法 |
|---|---|---|
| 原則 | 執行不停止 | 執行不停止 |
| 救済主体 | 行政庁 | 裁判所 |
| 性質 | 行政救済 | 司法救済 |
| 首相の関与 | なし | 異議制度あり |
記述式で使える答案フレーズ
執行停止とは、取消訴訟の係属中に、処分の執行等により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要がある場合に、裁判所が決定をもって処分の効力等を一時的に停止する制度である(行訴法25条)。
この一文で、定義+要件+条文を一気に書けます。
【まとめ】執行停止の要点整理
特例:内閣総理大臣の異議
原則:執行不停止
要件:取消訴訟+重大かつ緊急の損害
限界:公共の福祉/本案理由なし
不服:即時抗告
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