賃借権の譲渡・転貸借(民法612条等)、賃貸人の地位の移転(民法605条の3後段)とは?わかりやすく解説|行政書士試験

賃借権の譲渡・転貸借(民法612条等)、賃貸人の地位の移転(民法605条の3後段)とは?わかりやすく解説|行政書士試験
行政書士試験の民法分野において、記述式で非常に狙われやすいテーマが「賃借権の譲渡・転貸借」です。
一見シンプルに見えますが、
- 承諾の有無
- 契約関係の変動
- 借地借家法との関係
条文操作を脳内でもできるかどうか、が本質であると私は考えております。そして、これらの条文操作を日ごろから学習していることで短時間の学習でも高い学習効果を発揮できます。
これは、私自身が働きながら行政書士試験に1日1時間6ヶ月で独学合格した実績や行政書士事務所を経営しながら、司法試験予備試験短答式試験に合格し、論文式試験民法総合上位4.6%を獲得した事実や同じく行政書士法人を経営しながらも大阪大学法科大学院を修了した実績と経験から断言できます。
表面的な理解よりも、各契約・制度ごとに生ずる権利義務関係とそれらに基づく条文操作の可否や要否を軸に意識して、学習をすると短時間の学習にも関わらず、極めて効率的で記憶の長期の定着に結び付きます。
賃貸人の地位の移転とは?(定義)
賃貸人の地位の移転とは、
賃貸物の所有権が第三者に移転した場合に、その賃貸人としての地位も新所有者に移ることをいいます。
賃貸人の地位の移転の要件(民法605条の2)
まず基本ルールです。
条文(まず、出発点です。この条文は丸ごと理解と暗記してください。)
民法605条の2第1項以下
第二款 賃貸借の効力
(不動産賃貸借の対抗力)
第六百五条 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。
(不動産の賃貸人たる地位の移転)
第六百五条の二 前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
3 第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
4 第一項又は第二項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第六百八条の規定による費用の償還に係る債務及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。
(合意による不動産の賃貸人たる地位の移転)
第六百五条の三 不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。この場合においては、前条第三項及び第四項の規定を準用する。
(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等)
第六百五条の四 不動産の賃借人は、第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
一 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
二 その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求
つまり
原則として自動的に地位移転が起こる
例外:対抗要件の問題(重要)
ただし、常に移転するわけではありません。
ポイントは
賃借人が対抗要件を備えているか
典型例
- 建物賃貸 → 引渡しで対抗可
- 不動産賃借権 → 登記で対抗
これがないと
→ 新所有者に対抗できない
→ 地位移転が問題化
賃貸人の地位移転の効果(民法605条の2第3項・第4項)
ここが記述の核心です。
条文(準用関係)
民法605条の3後段
→ 605条の2第3項・第4項を準用
① 賃料請求権の帰属
地位移転後は
新所有者が賃料を請求できる
② 敷金の承継(超重要)
以上既述した条文集のうち、民法605条の2第4項
敷金返還義務も新賃貸人に移転
具体例(オリジナル)
Aが所有するマンションを
月額12万円でBに賃貸
その後AがCに売却
その結果・・・
- 賃貸人:A → Cへ変更
- BはCに賃料支払
- 敷金40万円 → Cが返還義務負担
賃貸人の地位移転が生じない場合(例外)
ここは細かいですが差がつきます。
① 賃借人が対抗要件を具備していない場合
新所有者に対抗できない
→ 地位移転を主張できない可能性
② 当事者間で特約がある場合
一定の修正が可能
【差別化】借地借家法との関係(超重要)
後述の通り、ここは他の受験生と圧倒的に差がつくポイントです。
判断基準
建物かどうか
建物賃貸の場合
→ 借地借家法が適用
借主保護が強化される
借地借家法の影響
- 新所有者にも賃借権を対抗可能
- 地位移転がスムーズに認められる
土地・動産の場合
→ 原則 民法適用
試験での本質
「民法だけで考える」受験生は危険
借地借家法との区別ができるかが合否ライン
転貸借・賃借権譲渡とは?(定義)
まずは基本概念を正確に押さえましょう。
転貸借とは
賃借人が、賃貸人から借りた物をさらに第三者に貸すことです。
賃借権の譲渡とは
賃借人が、自身の賃借権そのものを第三者に移転することです。
試験での核心
→ 「契約関係が残るか・入れ替わるか」
転貸・譲渡の要件(民法612条)
条文(まず、ここでも出発点は条文です!)
民法612条1項
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、
賃借権を譲渡し、又は賃借物を転貸することができない。出典:e-Gov法令民法
無断で行った場合
民法612条2項
→ 賃貸人は契約を解除できる
ただし重要判例(超頻出)
無断転貸でも、
- 親族への一時使用
- 実質的に管理が維持されている
などの場合
信頼関係を破壊しない場合は解除不可
(最判昭和28年9月25日)
具体例(オリジナル)
月額8万円のアパートを借りている賃借人が、
無断で知人に月額10万円で転貸した。
原則:解除可能
ただし事情次第では解除不可
転貸借の効果(民法613条)
転貸は関係が複雑になります。
① 賃料支払関係
A(賃貸人)
↓
B(賃借人)
↓
C(転借人)
以下の、根拠条文を必ず頭に入れておきましょう。
(転貸の効果)
第六百十三条 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
2 前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
3 賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
② 支払額の制限
Cは低い方でOK
- AB間:9万円
- BC間:11万円
→ Cは9万円のみ支払えば足りる
賃貸借契約が終了した場合(民法613条3項)
ここは記述頻出の超重要論点です。
① 合意解除の場合
民法613条3項本文
→ 転借人に対抗不可
転貸借はそのまま存続
② 債務不履行による解除
同条ただし書
→ 条件付きで転貸借も終了
要件:
- 解除時点で解除権あり
- 転借人に返還請求
ここを書けるかで差がつきます
具体例
Bが賃料3か月滞納
→ Aが解除
→ Cに明渡請求
この時点で転貸借終了
まとめ①対抗関係について(特別法である借地借家法との関係(最重要))
民法の賃借権の譲渡と対抗関係については事例ごとに借地借家法が適用されるのか、それとも民法が適用されるのかの区別をした学習を徹底することが大事です。私自身、司法試験予備試験短答式試験に合格した経験から、働きながらでも、短時間の学習でも合格できた経験から確信しております。
判断基準
対象が「建物」かどうか
建物の場合
→ 借地借家法が適用
民法よりも借主保護が強い
土地・動産の場合
→ 原則 民法適用
→例外として、建物の所有を目的とする土地の賃借権・地上権の場合は、借地借家法が適用されます。
この区別を必ずしてください。択一問題でも超頻出です。
試験での狙い方
- 建物賃貸 → 借地借家法
- それ以外 → 民法
この区別を瞬時にできるかで試験での問題処理速度が格段に変わります。
【記述対策】答案の書き方テンプレ
解答例の骨子として使えますのでご活用ください。
なお、当日は40字程度でまとめる必要がありますが、条文番号を省略するなどして要約してください。
本件では、賃借人は賃貸人の承諾なく転貸しているため(民法612条1項)、賃貸人は原則として契約を解除することができる(同条2項)。もっとも、信頼関係を破壊しない特段の事情がある場合には解除は制限される。また、転貸借においては賃貸人は転借人に対しても賃料を請求することができる(民法613条1項)。
まとめ②(試験に出るポイント)
- 承諾必要(612条)
- 無断 → 原則解除
- 例外:信頼関係破壊理論
- 譲渡 → 契約入替
- 転貸 → 契約増加
- 613条の処理(超重要)
- 借地借家法との区別
この分野、記述で崩れる受験生が非常に多いです
理由は明確です:
- 条文が複雑
- 契約関係が多層構造
- 借地借家法との整理不足
結果
「なんとなく理解」で本試験に突入 → 記述で失点
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